2024/3/30 朗読劇「美術室に置き去りにされた天使」

 久しぶりにシアターサンモール周辺へ。むかしお世話になったサンモールスタジオでは何がしかのオーディションが行われていて、昔もお世話になったミニストップとすき家は健在だった。この朗読劇も土屋さん目当て。怪人二十面相ぶりなのでおよそ一ヶ月ぶり。

 土屋さんの演じられているよしこが良かった。とりわけ声が好き。基本的に明るい子なので元気な声を聴かせてくれる。こういった土屋さんの太陽みたいな声が好きすぎて意識が持っていかれるからおはなしについていくのに必死だった。あかるい声だけでなく、気だるげな声も、想いを爆発させる声も、少し無理してる声も、全部いい。ビジュアルも(天使役なので)翼が生えており、とても美しくて良かった。ステンドグラスから差し込む光に照らされてほしい。
 声とビジュアルの話しかしてないけど、健気で心が強くて明るい子なのがありありと描かれていて良かったです。

 お話のほうを簡単に要約してしまうと、絵を描けなくなった天才少女ひまわりが、落ちこぼれた天使よしこに出会って、もういちど踏み出す話、というのが本筋。
 本筋はとてもシンプルなのだけど枝葉がものすごい多い。出演者が21人でその一人一人にキャラクターが割り振られている。初見は人数に圧倒されて振り落とされた感すらあった。そのキャラクターが全て物語に必要不可欠な存在だったかというと、流石にそんなことはなかった。作品には必要だな〜と思えたのもいい塩梅だった。
 色々な女の子がそれぞれの、各人のかたちで、思い思いに大事な女の子のことを思っていることが作品通して描かれていたし、人の数だけ思いの形は違うよねということでそれだけいろいろなシチュエーションが用意されている。
 とりわけ3回キスシーンが用意されていたことが象徴的。粘度高め、さわやかかわいい、湿度高すぎの三種類のキスシーン。赤尾ぴ先生の初期衝動がこれなのかと思うとその道を突き進んで欲しいと強く願った。

 そんな構成とは相反するものとはいえ、ひまわりとよしこの二人のシーンをもっと眺めていたかったな。二人がめちゃめちゃ仲良しでお互いを運命的な存在と思えていることは嫌というほど伝わってきたけど、それでも、あの二人は二人で遊んだりすること、あったんだろうかとか思ってしまう。遊んだりしてなくても、ひまわりが絵を書いてるそばにいるよしこ…みたいな、二人の空間を感じたい。

 物語のクライマックス。よしこは天使の使命を果たすことを選び、ひまわりの元を去る。よしこは天使の使命としてひまわりを見守り続けるのだけど、ひまわりはよしことの幸せな記憶を全て忘れ去ってしまう。また絵を描けるようになったひまわりはどこかに知らない天使の存在を感じながら人生を歩んでいくのだった。
 永遠の別離を迎えたようなものなのに、物語はとても明るく幕を閉じるし、見終えた観客の感覚としても前向きに受け取れた。楽しかったころの記憶を失ったからこそ幸せに思えるのかも。ひまわりの記憶の中によしことの楽しい日々が残っていたら、どうしても縛られそうだし、また会いたいと思ってしまいそうだし。空の向こう、約束の場所もお互いに全部忘れて日々を生きていたら呆れるほどハッピーだったのかもしれない(多分違う)

作中は季節が巡っていくのだけど、そのなかでも冬と桜が印象的なモチーフになっていて、この時期にとてもぴったりの朗読劇だった。

昼の部のあと、お見送りが一応あったけどステージ上に大量の演者が並び、オタクは回転寿司みたいにぐるぐると回っていく。何かしらの儀式のよう。

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