日: 2024年6月14日

2024/5/15,5/16 朗読劇『ネコたん!~猫町怪異奇譚~』

 東池袋のあうるすぽっとで連日開かれていた朗読劇のうち、二日間で土屋さんが出演するということで参加。名前を聴いたことはあるものの初めてエレベーターを使うと何階に劇場があるのかよくわからず、誤った階に連行されしばらく迷う。エレベーター脇にある階段で2階に上がるのが正解らしかった。

 萩原朔太郎の短編小説『猫町』をもとに作られた朗読劇。猫の住む猫町を舞台に、繰り広げられる殺しとそれを追う探偵の物語。登場するキャラクターはほぼ全て猫。

 弁士の方が地の文を担当し、演者はキャラクターの部分だけ演じる形式。一日目と二日目では主演を含め演者が大きく異なっていたのだが、その結果、掛け合いのテンポ感がまるで異なり、客席の反応や雰囲気も異なっていた。演者が違うと掛け合いが変わるのは生のお芝居という感じがするし、演者が違うと来る客層も異なるので反応が異なってくるというのもまた面白かった。

 主演が15日は吉武千颯さん、16日は伊達さゆりさん。主演の人がとにかく出番の多い朗読劇だった。二人の立ち方や目線の配り方など、要するに演技の違いがありありと表れていてよい体験だった。どちらも探偵服姿に猫耳を装備しており、そんな姿で出番が超多く、最後にはなんとArte Refact描き下ろしのメインテーマ(普通にいい曲)を歌うもんだから主演の人目当てだともうとても幸せなのだろうな。

 ことあるごとに小ボケをふんだんに挟み込みながら探偵による捜査が進み、最終的になんだかんだで殺しの実行犯を追い詰め、そのさなかいかにも死にそうなキャラは主人公をかばって良い感じに死んでいき、それを受けて主人公が奮起しなんやかんやで悪党を打ち倒し、ちょいビターなHAPPYENDでおわる。しかし黒幕はまだ残っているぞ、という感じで次への引き。朗読劇で引き?と思うかもしれないし自分でもめっちゃ続きやりたそうだな…と思ってたら千秋楽で続編が発表されていた。まあそうだわな。

 正直、この朗読劇のおちゃらけかたが肌に合わなかった。登場キャラクターの名前が猫の品種ほぼそのままだったの何? 真剣につけてくれよ!でもこの朗読劇は全体的にギャグめいてるから名前の時点でこの朗読劇はおちゃらけてるんですよと示してくれたのかもしれない。萩原朔太郎・猫町より、とかアピールしてるけどこれHUMANLOST人間失格(全人類、失格)のほうがよっぽど仁義があった気がする。
 この作品の猫という存在の扱い方をみると、キャッツ(ミュージカル)はちゃんと猫の在り方に寄り添っていたな…と思う。キャッツに出てくる猫たちは各々が好きなことをやっていて、その積み重ねで物語が進んでいく感じが良かったんだよね。映画は忘れてください。ネコたんの猫ってやってること普通に人社会の再生産じゃん?(というか人社会そのままじゃん?)猫らしさって飼い猫と野良猫の対立軸くらいしかなかった。毛皮を売るとかもなんだかな~。こういうなんだかな~が積み重なった感じ。

 楽しいところもあったけれど、やっぱり惜しいな~って思ってしまう。あたいこれ許せへん!!とまではいってないので、続編でも召集の笛が鳴らされたら見に行くつもりだけど。続きでこの朗読劇の乗りこなし方を覚えたい。

 土屋さんは15日は作中でダークヒーロー(?)的な存在のリンちゃんを。16日は黒幕的存在のリアンちゃん(サイベリアンより)を演じられており、両日ともビジュアルが良かった。とりわけ16日のときの真っ赤なワンピースドレスがとても似合っていた。美! リアン氏は序盤はあらあら系のセレブとして登場し、クライマックスで黒幕としての本性をあらわすキャラクター。最初から赤いドレスは着用されていたのだが、本編ではドレスの上に白い上着を着用しており、そちらの印象が強くなっていた。そんな感じだったので、本編の幕をおろしたあとのCパートな場面で真っ赤なドレスで登場されたのはとても格好よく、美しくて。もこもこのファーを携えていたのも成金セレブな悪役として満点だった。
 演技でいうとリンちゃんの台詞では「あいかわらずやさしいお・と・こ」という言葉が良かった。カッコよく戦う声を聴くことも死にゆく声を聴くこともあまりないので(ラグナクリムゾンではさっくり死んだし)、貴重な機会だったかも。
 リアンちゃんのセレブ演技はもうすきすぎ。おほほほ!すきすぎ。ラストに本性を表したあとの成金悪役セレブな演技も良すぎだった。高笑いもよかったし悪いセレブっぽく猫の品種を叫んでいくのも狂ってる感じが溢れ出ててたまらなくよかった。悪の成金セレブっぽく辞書を朗読するコーナーを設けてほしい。
 でもま~~~総じてこの朗読劇では土屋さんの出番は少なめだった。これまでが恵まれ過ぎたのかもしれないが。

 この朗読劇で一連の朗読劇ラッシュがおわった。自分は朗読劇に何を求めてるんだろう…と最近は考えている。