タグ: 土屋李央さん

2024/5/15,5/16 朗読劇『ネコたん!~猫町怪異奇譚~』

 東池袋のあうるすぽっとで連日開かれていた朗読劇のうち、二日間で土屋さんが出演するということで参加。名前を聴いたことはあるものの初めてエレベーターを使うと何階に劇場があるのかよくわからず、誤った階に連行されしばらく迷う。エレベーター脇にある階段で2階に上がるのが正解らしかった。

 萩原朔太郎の短編小説『猫町』をもとに作られた朗読劇。猫の住む猫町を舞台に、繰り広げられる殺しとそれを追う探偵の物語。登場するキャラクターはほぼ全て猫。

 弁士の方が地の文を担当し、演者はキャラクターの部分だけ演じる形式。一日目と二日目では主演を含め演者が大きく異なっていたのだが、その結果、掛け合いのテンポ感がまるで異なり、客席の反応や雰囲気も異なっていた。演者が違うと掛け合いが変わるのは生のお芝居という感じがするし、演者が違うと来る客層も異なるので反応が異なってくるというのもまた面白かった。

 主演が15日は吉武千颯さん、16日は伊達さゆりさん。主演の人がとにかく出番の多い朗読劇だった。二人の立ち方や目線の配り方など、要するに演技の違いがありありと表れていてよい体験だった。どちらも探偵服姿に猫耳を装備しており、そんな姿で出番が超多く、最後にはなんとArte Refact描き下ろしのメインテーマ(普通にいい曲)を歌うもんだから主演の人目当てだともうとても幸せなのだろうな。

 ことあるごとに小ボケをふんだんに挟み込みながら探偵による捜査が進み、最終的になんだかんだで殺しの実行犯を追い詰め、そのさなかいかにも死にそうなキャラは主人公をかばって良い感じに死んでいき、それを受けて主人公が奮起しなんやかんやで悪党を打ち倒し、ちょいビターなHAPPYENDでおわる。しかし黒幕はまだ残っているぞ、という感じで次への引き。朗読劇で引き?と思うかもしれないし自分でもめっちゃ続きやりたそうだな…と思ってたら千秋楽で続編が発表されていた。まあそうだわな。

 正直、この朗読劇のおちゃらけかたが肌に合わなかった。登場キャラクターの名前が猫の品種ほぼそのままだったの何? 真剣につけてくれよ!でもこの朗読劇は全体的にギャグめいてるから名前の時点でこの朗読劇はおちゃらけてるんですよと示してくれたのかもしれない。萩原朔太郎・猫町より、とかアピールしてるけどこれHUMANLOST人間失格(全人類、失格)のほうがよっぽど仁義があった気がする。
 この作品の猫という存在の扱い方をみると、キャッツ(ミュージカル)はちゃんと猫の在り方に寄り添っていたな…と思う。キャッツに出てくる猫たちは各々が好きなことをやっていて、その積み重ねで物語が進んでいく感じが良かったんだよね。映画は忘れてください。ネコたんの猫ってやってること普通に人社会の再生産じゃん?(というか人社会そのままじゃん?)猫らしさって飼い猫と野良猫の対立軸くらいしかなかった。毛皮を売るとかもなんだかな~。こういうなんだかな~が積み重なった感じ。

 楽しいところもあったけれど、やっぱり惜しいな~って思ってしまう。あたいこれ許せへん!!とまではいってないので、続編でも召集の笛が鳴らされたら見に行くつもりだけど。続きでこの朗読劇の乗りこなし方を覚えたい。

 土屋さんは15日は作中でダークヒーロー(?)的な存在のリンちゃんを。16日は黒幕的存在のリアンちゃん(サイベリアンより)を演じられており、両日ともビジュアルが良かった。とりわけ16日のときの真っ赤なワンピースドレスがとても似合っていた。美! リアン氏は序盤はあらあら系のセレブとして登場し、クライマックスで黒幕としての本性をあらわすキャラクター。最初から赤いドレスは着用されていたのだが、本編ではドレスの上に白い上着を着用しており、そちらの印象が強くなっていた。そんな感じだったので、本編の幕をおろしたあとのCパートな場面で真っ赤なドレスで登場されたのはとても格好よく、美しくて。もこもこのファーを携えていたのも成金セレブな悪役として満点だった。
 演技でいうとリンちゃんの台詞では「あいかわらずやさしいお・と・こ」という言葉が良かった。カッコよく戦う声を聴くことも死にゆく声を聴くこともあまりないので(ラグナクリムゾンではさっくり死んだし)、貴重な機会だったかも。
 リアンちゃんのセレブ演技はもうすきすぎ。おほほほ!すきすぎ。ラストに本性を表したあとの成金悪役セレブな演技も良すぎだった。高笑いもよかったし悪いセレブっぽく猫の品種を叫んでいくのも狂ってる感じが溢れ出ててたまらなくよかった。悪の成金セレブっぽく辞書を朗読するコーナーを設けてほしい。
 でもま~~~総じてこの朗読劇では土屋さんの出番は少なめだった。これまでが恵まれ過ぎたのかもしれないが。

 この朗読劇で一連の朗読劇ラッシュがおわった。自分は朗読劇に何を求めてるんだろう…と最近は考えている。

2024/5/5 朗読劇『若きウェルテルの悩み』

 1週間ぶりのTOKYO FMホールで1週間ぶりの朗読劇。この日も土屋さん目当てだったのだけど、この1週間で朗読劇北京朗読劇と3つも異なるイベントがあり、だいぶ充実した黄金週間だった。ありがたい。
 この朗読劇では村瀬歩さんが主演を務められており、カッコいい低めのお声の演技をされていたのでラグナクリムゾンだ!とキャッキャしたり、星見プロに所属していた時期もあったので石谷さんをはじめて拝見できてキャッキャしたりしていた。
 名作を題材とした朗読劇だったのだけれど、恥ずかしながら原作を存じ上げてなかった。さくしゃのなまえだけしってた。パンフレットを読むと悲恋モノと書いてあり、悲恋モノといえば、個人的には『太陽の塔』(森見登美彦)が人生の一冊くらいの存在だったのだけれど、何となく感じるところがあり終演後に「太陽の塔 ウェルテルの悩み」でパブサかけたらいくつかヒットしたので、この感触はそこまで間違ってないんだと思う。


 若き青年ウェルテルが素敵な女性シャルロッテ(但し婚約者持ち)へのままならぬ恋心に翻弄され、自ら命を絶つまでのお話。
こうかくと重苦しい話に聞こえるし、実際、はかなくも悲しい恋物語なのだけど……。




 結論から正直に言ってしまうと、ウェルテルの挙動が本気で演者を好きになって極まってしまったブレーキのきかないオタクの奇行のように感じてしまい、これオタクのお話なんじゃないか?と脳が判断したのか、朗読劇を聞いていてめちゃくちゃ面白くなってしまった。理性が効かない低所得のオタクとしては身につまされる思いもあり、そういう意味でも見応えのある朗読劇だった。ひたすら口角が吊り上がっていたのでマスクがあってよかった。

 序盤でシャルロッテ(以下、ロッテ)がウェルテルにかけた「明日もいらっしゃるのでしょう?」という言葉がもうすごいダメだった。オタクにそんなこと言ったら毎日通うに決まってるでしょ!!!!!実際にウェルテルは毎日通った(いわんこっちゃない)

 物語が中盤に差し掛かるとウェルテルは遠くの土地に移住する。ウェルテルはロッテから離れ、労働に勤しみ、真っ当な道を進むように見えたのだが……。このときのウェルテルはオタクとしては終わりのはじまりだけれど、彼の人生にとっては間違いなく良い方向に進むものだったので、頑張れ…! もう戻ってくるな…! と手に汗握りながら応援してしまった。オタクなんてやめれるならやめたほうがいい。とはいえ結末は冒頭で判明しているので、いつ破綻が訪れるのかそわそわしていた。結局現場というかロッテのもとに戻ってきてしまったときの”終わり”感は強烈なものがあり味わい深かった。
 作中、ウェルテルはそんなことしちゃだめだよ!出禁になるって!!(オタク目線のきもち)というムーブを結構、いやかなりする。そんな行いを経ても、ロッテはウェルテルのことを大事な友人として想っており、それは素敵で貴重なことなのでは、と正直感じてしまっていた。別に恋仲にならなくても、末永く交流して人生送れたら楽しいし幸せじゃん、など思っていたのだけれど、これは現代の価値観で見てしまっているなとも感じる。
 終盤、あれだけ煩悩に振り回されたムーブを重ねたウェルテルは最後までロッテに慕われていたことが判明する。ロッテは夫にも誠実であり当然きちんと愛していて、その上でウェルテルも友人として慕っていた。だからこそ、明らかに挙動がおかしくなりつつあるウェルテルとの距離が近くなりすぎることを恐れて、ひとまず、落ち着いて、距離感を再構築するために、いまは(すこしだけ)離れることが必要だと判断し、ウェルテルにそのことを告げた。その結果、ウェルテルはメンブレして銃で自死した。

 ウェルテルが死に至ったとき、彼の手にはロッテから贈られたピンクのリボンが握られていたという語りでオタク君さあ…って思ってしまった。ちなみに、ロッテの身につけていたリボンをウェルテルがほしいとお願いした結果ロッテからウェルテルに贈られたものである。
 ウェルテルが自害に使用した銃は、防護用の銃がほしいから君の家に飾ってあった銃貸してよ!とロッテの夫にお願いし、ロッテの夫は過去のトラウマから銃を一切持てないので代わりにロッテが直接その手で持ち運んだ銃である。要するにウェルテルはロッテが運んだ銃で死のうとして、成し遂げたのであった。オタク君さあ…。
 
 そんな感じで、最後までジェットコースターのように楽しく見てしまった。こんな受け取り方を、自分の感性として受け入れていいのだろうか。なんか…悲恋モノを面白く味わっちゃいます!wみたいな感じで超嫌なんだけど、でも本能的にそう感じてしまっているのも確かだ。どうしてこうなってしまった?責任者はどこか。
 とはいえ、物語の最後でウェルテルの死とその有り様を聞かされてパニックになっているロッテはいたたまれなかった(その演技も良かった)。なぜあんなにいい人がつらい思いをしなければならないんだろう。

 この日の土屋さんは白いドレス姿。物語でも登場したピンクのリボンを身に着けられていた。そして、お髪を結ってまとめられており、上品で美そのもの。お首があまりにも綺麗。好き。ウェルテルが気を狂わせてしまうのも納得のお姿だった。まあ、立ち位置が座席の対角線上で、朗読中は横顔しか見れなかったのだけど(横顔も美しかったので良かった)、それでも見惚れてしまう美しさだった。
 この日の土屋さんの演技は気取らない上品さと包み込むような優しさが満ちあふれていて素晴らしかった。脳に優しい声。
 とりわけ、ロッテが「わたくしドイツワルツが大好きなんです!」と言葉をかけるシーンは珠玉の演技だった。朗読を聴いていて、可愛すぎてわ~かわいい!!!って思った瞬間に作中でもウェルテルがかわいい!と反応していたのがとても素敵な体験で。あの可愛さは作品で要求される必然的な可愛さなのだけど、その可愛さを確かな説得力をもって提供できるのだなあ……。プロの仕事を感じる。
 終盤、ウェルテルのムーブに対して困惑していたときのロッテのお声も、彼女の誠実さと、複雑な胸中が表れていた。なんとか絞り出した「どうして私なんかを…?」という言葉が耳に残っている。そんな姿も魅力的なんですねえ!

 そうしてこうして朗読劇を見て、好きになってもよい(むしろ好きになるための)存在であるアイドルという概念は人類を救っているのだと強く感じた。アイドル文化が花開いている現代のオタクは幸せかもしれない。アイドルをしている方々に感謝したい。けれど、現代でも本当に本気で演者を好きで恋してしまった人はウェルテルと同じように苦しいのかも。ウェルテルみたいなヤバいムーブしたら出禁になるし、行動に歯止めがかかってストッパーになるのではないでしょうか。なんの話?

2024/4/28 キミに贈る朗読会『春とみどり』

4/28@TOKYO FMホール。漫画原作の朗読劇。この日の演者は前田のかおりん、山根のやや氏、土屋李央さんの三人で、昼夜二公演だった。

 この朗読劇の開催を知ってから原作『春とみどり』を読んだのだけれど、丁寧な手ざわりが好印象の素敵なお話で大好きになってしまっていたので、この原作を朗読劇で表現するのか楽しみにしていた。そのため、初見の1部では原作からどうやって朗読劇に落とし込んだのかとかそういった朗読劇の構成部分の味わいを強く感じることとなり、作品の世界に浸れたのは2部になってようやく、という感じ。
 
 原作のあらすじ↓
 人づきあいが苦手で、どこにいても居場所がないと感じているみどり(31)。ある日、母親からの電話で中学時代好きだった親友・つぐみの死を知ったみどりは、葬儀へと出向く。中学時代、自分に居場所を与えてくれたつぐみの死を受け入れられられず、ひとりうつむいていると、声を掛けられる。見上げると、そこには中学時代と姿が変わらないつぐみがおり、思わず駆け寄るみどりだったが、少女はつぐみの娘の春子で……居場所がないみどりと居場所をなくした春子、そんなふたりが織り成すセンシティブ同居譚。(引用元:https://comic-meteor.jp/haru/)

 配役も事前に発表されており、前田さんがみどり、山根さんがつぐみ、土屋さんが春子さん。お三方がどんな演技をされるのかあれやこれやと思いを馳せていた。だから当日、いざ開演を迎えてから、演者の方々がそれぞれ第一声を発するその瞬間までとても緊張していたし、一番固唾をのんで見守っていた時間だったかもしれない。

 朗読劇はみどりの語りからスタートし、回想のなかのつぐみ、葬式での春子さんと三者が登場していく。つぐみさんのお声が明るいカラっとしたものだったので、やはり春子さんも明るい系統かな?親子やし?などとそちらに重心を傾けて身構えていたところ、実際の春子さんの演技では土屋さんの地声に近い声をしていた。なるほどね!了解!!自分の中の想定と相手の演技プランに差異が生じても生じなくても楽しいので、事前に想定を立てた時点であとはどうなっても良かった。
 
 朗読が始まってすぐ目についたのは、脚本がペラ紙に印刷されていたこと。譜面台に台本が束になって置かれていて、演者はそれを見て朗読を行う。そして、朗読が進むごとに一枚一枚、ペラ紙をステージ上に投げ捨てていくのだった。そんな光景をみたのはこの日がはじめてだったし、積もってていく紙たちの様子をみて、時が逆向きに進むことはないことを身体で味わった気がした。

 冒頭、母からみどりへ電話がかかってくるシーンを全てみどりのモノローグで処理し、つぐみの親族も基本モノローグに変換していたところで、この三人以外は登場させない方針なことを承知つかまるのだった。
 基本的には原作からの引き算で朗読劇のシナリオは構成されていたのだけれど、つぐみと春子の家の片付けをするシーンでは、つぐみからの留守電がまだ残っている場面が追加されている。原作から追加された場面で、突然の別れの生々しさと臨場感がたっぷりで、朗読劇ならではの足し算に天晴だった。

 朗読劇全体を通して強く印象に残ったのはクライマックス、みどりがつぐみの遺した手紙を読むシーン。つぐみという人間の核心が明かされる場面であり、朗読劇でここどうなるのかな!とわくわくしていた部分でもある。朗読劇ではつぐみの独白という形で表現され、山根さんによるおとなになったつぐみのゆっくりと語るような演技がすごい…すごいよかった。それだけでも大満足だったのだけれど、そこから畳み掛けるかのように、手紙を全て読み終えた山根さんは役目は果たしたと言わんばかりに二人の演者を残して舞台を去るのだった。その演出に度肝を抜かれてしまった。
 この演出について、手紙を読み終えたみどりはつぐみへの思いに一つケリをつけられたのかな(思い出のつぐみが顔を出すことはなくなったのかな?)と自分は受け取ったのだけど、これは人によって受け取り方が違いそうで気になるところ。

 二人の関係を描くうえで、三人目の存在が大事というのはよく言われていることで(要出典)。原作でも春子さんのおばさまや、友人、みどりの職場の人がその役割を担っている。職場のあらあらうふふおねーさんがみどりさんの変化を映す鏡になっていたのが印象的だ。
 対して、この朗読劇は一生二人で展開される。舞台上に3人いるけれど3人が揃うことはない。一人死んでるし…。原作から3人目の存在がオミットされたぶん、原作にないモノローグが多分に加えられている。なんだか百合漫画みたいだというのはおいておいて、必然的に内省的な印象が強くなる。原作で描かれていた二人と外部の人々とがつながるシーンは、読者が一息つけるポイントにもなっていたことを改めて実感する。
 もともと別れからはじまる物語とはいえ、ほがらかさもあった原作に比べると、前述のシナリオの構成面や脚本投げ捨ての演出に加えて、かおりたむの切実なみどりの演技の影響もあってか、切なさや寂しさが強く感じられた。そのぶんラストシーンの明るさやあたたかさは原作以上に強く感じられたのはとてもいいところ。
 構成演出演技、全てにおいてブレがなくこの朗読劇のこの座組で表現したい春とみどりはこれだったのだ、と素直に受け取ることができた。個人的には学校のシーンの春子さんとかも見たかったけどね。

 春子さんの演技について。みどりの「お友達として…」って言葉に春子が噴き出すくだりが暖かくて笑顔になっちゃうのだけれど、そこから春子のお声のトーンが明るくなった気がして、それも二人の距離感の接近を感じてしみじみと好きなところ。あたたかい。
 つぐみがのこしたカーテンの一幕で、涙腺が決壊してしまう春子の演技がとても良かった。好き。つぐみは寂しさを抱えていて、その結果居場所を探して家を飛び出した。春子さんも家につぐみさんがいないのが当たり前だった。でも春子さんはつぐみのような飢えはなく、真っ直ぐに育っている。そこにつぐみさんは忙しくても懸命に子育ても頑張られていたのだなあ…と感じられて、カーテンのシーンが大好き。

 土屋さんの衣装が白と黒を基調としたもこもこジッパージャケットで、なんだかロクサス(キングダムハーツ)を思い出した。さすがに私服じゃないらしかった。どういう意図が込められていたのだろう。  

 終演後のちょっとしたアフタートークでこの朗読劇にあわせるならこの香水だよね…×3をした結果三人とも示し合わせたかのように同じ香水を選んでた話がとても素敵に感じた。自分ならどんな香水を選ぶだろうか。香水使ったことないけれど。

2024/3/30 朗読劇「美術室に置き去りにされた天使」

 久しぶりにシアターサンモール周辺へ。むかしお世話になったサンモールスタジオでは何がしかのオーディションが行われていて、昔もお世話になったミニストップとすき家は健在だった。この朗読劇も土屋さん目当て。怪人二十面相ぶりなのでおよそ一ヶ月ぶり。

 土屋さんの演じられているよしこが良かった。とりわけ声が好き。基本的に明るい子なので元気な声を聴かせてくれる。こういった土屋さんの太陽みたいな声が好きすぎて意識が持っていかれるからおはなしについていくのに必死だった。あかるい声だけでなく、気だるげな声も、想いを爆発させる声も、少し無理してる声も、全部いい。ビジュアルも(天使役なので)翼が生えており、とても美しくて良かった。ステンドグラスから差し込む光に照らされてほしい。
 声とビジュアルの話しかしてないけど、健気で心が強くて明るい子なのがありありと描かれていて良かったです。

 お話のほうを簡単に要約してしまうと、絵を描けなくなった天才少女ひまわりが、落ちこぼれた天使よしこに出会って、もういちど踏み出す話、というのが本筋。
 本筋はとてもシンプルなのだけど枝葉がものすごい多い。出演者が21人でその一人一人にキャラクターが割り振られている。初見は人数に圧倒されて振り落とされた感すらあった。そのキャラクターが全て物語に必要不可欠な存在だったかというと、流石にそんなことはなかった。作品には必要だな〜と思えたのもいい塩梅だった。
 色々な女の子がそれぞれの、各人のかたちで、思い思いに大事な女の子のことを思っていることが作品通して描かれていたし、人の数だけ思いの形は違うよねということでそれだけいろいろなシチュエーションが用意されている。
 とりわけ3回キスシーンが用意されていたことが象徴的。粘度高め、さわやかかわいい、湿度高すぎの三種類のキスシーン。赤尾ぴ先生の初期衝動がこれなのかと思うとその道を突き進んで欲しいと強く願った。

 そんな構成とは相反するものとはいえ、ひまわりとよしこの二人のシーンをもっと眺めていたかったな。二人がめちゃめちゃ仲良しでお互いを運命的な存在と思えていることは嫌というほど伝わってきたけど、それでも、あの二人は二人で遊んだりすること、あったんだろうかとか思ってしまう。遊んだりしてなくても、ひまわりが絵を書いてるそばにいるよしこ…みたいな、二人の空間を感じたい。

 物語のクライマックス。よしこは天使の使命を果たすことを選び、ひまわりの元を去る。よしこは天使の使命としてひまわりを見守り続けるのだけど、ひまわりはよしことの幸せな記憶を全て忘れ去ってしまう。また絵を描けるようになったひまわりはどこかに知らない天使の存在を感じながら人生を歩んでいくのだった。
 永遠の別離を迎えたようなものなのに、物語はとても明るく幕を閉じるし、見終えた観客の感覚としても前向きに受け取れた。楽しかったころの記憶を失ったからこそ幸せに思えるのかも。ひまわりの記憶の中によしことの楽しい日々が残っていたら、どうしても縛られそうだし、また会いたいと思ってしまいそうだし。空の向こう、約束の場所もお互いに全部忘れて日々を生きていたら呆れるほどハッピーだったのかもしれない(多分違う)

作中は季節が巡っていくのだけど、そのなかでも冬と桜が印象的なモチーフになっていて、この時期にとてもぴったりの朗読劇だった。

昼の部のあと、お見送りが一応あったけどステージ上に大量の演者が並び、オタクは回転寿司みたいにぐるぐると回っていく。何かしらの儀式のよう。

劇場版ポールプリンセス!!が無料で観れるということで北京に行った。

 

 北京で開催される第45回IDO AGC EXPOにて、劇場版ポールプリンセス!!の上映会が無料で開催されるということで、行かない理由や行けない理由をひとつひとつ精査していった結果全部なくなってしまったので行ってきました。

 飛行機の予約が遅くなったり、そもそも中国の祝日にどっかぶりだったということもあって、渡航費がだいたい10万円くらい。それだけあればポールプリンセス!!を50回見たところでお釣りがくるので、どれだけポールプリンセス!!の鑑賞代金がリーズナブルなのかよくわかっていただけるだろう。

 今回はトランジットビザ免除制度を利用するため、成田発仁川経由北京行きの便を選択。成田を発つのは朝9時。トランジットビザ免除制度というのは、ある国から中国を経由してまた別の国へと移動する場合、経由地の含まれる地域をビザ無しで滞在していいというもの。経由ついでに観光して遊んでちょ、なんて意向の込められた施策らしい。ビザを取ることをとにかく面倒に感じてしまった自分にとってはとてもありがたいもので、今回は(日本→)韓国→中国→日本という形で条件を満たすことにした。

 渡航一週前になったところで国際線は早く行かないとじゃね?これ始発で間に合わなくね?と気づき、成田の近くで前泊することに。以前は空港泊も選択肢だったのだが、最早そんな元気はないので素直に宿をとる。昔は元気だった。最後に空港泊をしたのはいつだろうか。
 9hoursの価格に+1.5kぐらいの値段のホテルを発見。確保。最近は観光客もうずっと大杉でどこも宿がない!高ぇ!と聞くし、すんなり宿が取れたのは僥倖だったのかな。
 この宿がちゃんとしたホテルだった。まず個室のユニットバスが広々としてるし超清潔。いつもユニットバスがとかく苦手で、しばしば大浴場に逃げがちなのだけれど、ここではとんと苦手が発生しなかった。また、寝具、とりわけ枕がめっっちゃ良かった。柔らかすぎず硬すぎず、眠ることを全く阻害しないこの枕はどこのメーカーのものなのか問い合わせたかった。そのままずっと寝ていたかった。
 宿泊料が安かったからてっきりビジネスホテルかと思っていたけれど、どうやらリゾートホテルだったようだ。ジムやジャグジーまであるらしい。


翌日朝イチ、シャトルバスで空港に移動する。

 成田空港に到着したのは5時30分ごろ。これから利用するアシアナ航空のチェックインカウンターはまだ空いてない。もっとベッドで眠ってればよかった。
 6時30分、チェックインカウンターがオープン。受付でトランジットビザ免除制度を使うことを伝えると、帰りの飛行機の機体番号や航空券番号などを確認されて、チェックイン完了。荷物を預ける際、預け荷物の中にヒナノちゃんのぬいぐるみも入れそうになったので回収。ロストバゲージがほんとうにこわい。

 マッサージチェアで隣になった英国(?)紳士がマッサージチェアの使い方わからなさそうだったので助けたところ、その方と少しだけおしゃべりすることに。何が目的?と聞かれたものの(かんこうってなんだっけ??)としばらく間をおき、最終的にぐぐる先生に頼ってサイトシーイングと答えたらツーリズム?と返されてイエスイエス。今振り返るとレディースボイスアクター!!!!!!!と大きな聲(こえ)で答えるべきだった。
 

 仁川空港での顔パス(事前登録)に多分スマホアプリを介する必要はなさそうなので、事前に機内で中国用のSIMへ入れ替え。失くしたらどうなるんだろう。

 仁川までのフライトは数時間だったものの機内食が出てきて驚く。人生初の機内食だった。そんな遠くなくても出てくるんだ。台湾行ったときはLCCだったからかな。朝ごはん食べちゃったので食べ切れるか不安だったものの、カツの乗ったほかほかご飯が美味しくて完食。

仁川空港で乗り継ぎ。搭乗口を間違えて迷うも、無事セーフ。

 

 仁川発北京行の搭乗時刻になったところでふと気づく。韓国入ってからパスポートの認証してなくない?前日に慌てて登録した顔認証ゲートも何も通ってなくない??大丈夫か???と不安になりながらも無事搭乗できたので多分大丈夫ということにする。乗り継ぎは入国出国の手続きはいらんのかな(初心者)。

 仁川北京間でも機内食が出る。ビビンバライクの弁当。美味しかった。ゆっくりと時間をかけて完食。飛行機に乗るたび弁当が出てくるので、なんだかすごいペースで飯を食べている気がする。でも普段の朝飯と昼飯の間隔もこんなもんなんだよね。

 それでまあ到着の時が近づいてきたわけだが、機内から見えた中国の景色のファーストインプレッションは箱庭諸島(古のブラウザゲーム)だった。いや、全くもって島ではないんだけど。建物の建ち方並び方が似てて……。
 同じマンモスサイズのマンションがズラズラっと並ぶ。その区画が幾つも幾つもある。水平線は見えず、地平線しか見えない。眼下には明らかに普段生きてる世界は異なる在り方の世界が広がっている。ちょっとひた非日常感があって感動した。空から見ると、ひとつひとつの街の周りには一面の緑が広がっていて、街の内と外にはっきりとした境界があるように見えた。そんな街がいくつもあって、それぞれの街と街が道路で繋がっている。日本でよくみかけるような、街がひたすら続いていく、平野の部分に居住地が詰め込まれている光景とは全然違う。海外みたいでもう一度感動した。

 着陸。ネットに接続。事前に用意していた香港SIMのおかげで爆速で繋がる。5Gはこれまで繋いだことがないのでウキウキである。
 Twitter中毒なのでTwitterに接続。香港SIMだとTwitterも普通に見れるらしい。TLを更新して目に入ってきた日向未南さんのツイートで本当にポルプリのイベントが開催されることを確認する。今日までこっちでは公式側の人誰も触れてなかったし、非公式のイベントかもしれなかったし(?)。しかしまあ、まだ本当に参加できるかよく分かってないんだけれども。

 空港に到着後、トランジットビザ免除制度を利用するため、先人の教えに従って24/144 H Transferと書いてある窓口を探す。正確にはふらふら雰囲気で歩いてたら運良く見つかる。窓口はクラッシュバンディクーの若干見つけづらい隠しルートのような、進路を少し外れたところに位置していたので、たまたま見つからなかったらどうなっていたんだろう。
 窓口には欧米系の方々が小さな列を形成していた。その流れに乗る。必要な書類を渡して、日本に行くの?みたいなことを聞かれたので韓国から来ました!と答える。文字に起こすと何も聞かれたことに答えてねえ(ごめんなさい)。

 入国審査を済ませて無事に入国。空港内の列車に乗ってさらに移動。荷物受け取りゾーンに到着したものの、掲示板を見てもあちこち探しても自分の荷物がどのレーンに流れてるのか全くわからない!!!しばらく迷ったのち、観念して受付の人に頼ることに。聞きたいことをGoogle翻訳に入力して相手に見せると、どこに行けばいいか教えてくれた。Google翻訳すんげえ〜。

 空港がでかい。正直すぐにでもホテルへ移動してだらけたかったのだが、ホテルのデポジットが現金オンリーだったら死では?という懸念があり(調べてもようわからんので)、その分だけ現金を両替したい、ということで両替できる所を探す。
 空港がでかい。迷う。結局両替所探しても見つからなかったのでATMで必要分をキャッシング。あとは多分アリペイでなんとかなるやろ。
 アリペイさえあればどうにでもなる!!と駅の保安検査(北京では全ての駅で保安検査が行われている)を抜けたもののアリペイ内の地下鉄用のQRコードがアクティベートできずおしまい。事前にアクティベートしていたのはバス用のQRコードだったらしい。結局ここでもGoogle翻訳の力でなんとか乗車券を手に入れ生存。巨人の肩ありがと~!


北京の地下鉄には車両の真ん中にポールが立っていた。

 地下鉄を乗り換えるたびに駅員さんに切符購入をお願いする。日本同様切符の自販機も存在するのだが、購入する際に個人情報の入力を要求され、外人は利用できないのだった。その代わり、どの駅にも購入窓口があるので、そこで駅員さんに「⚪︎×△⬜︎駅までのチケットを買いたいです」とGoogle翻訳に入力したものを見せると、切符を用意してくれる。受付の画面にQRコードが表示されるので、それをアリペイで読み込んで決済するという形式だ。
 乗り換えも3度目となり、そろそろ慣れてきたかな……というタイミングで突如アリペイの決済が失敗するようになる。幸いなことに地下鉄の切符は現金でも購入できたので、難を逃れた。宿のデポジット用に念のため工面しといた現金がないとここで本格的に詰んでおり、紙一重だった。少しくらいは現金を持っておくべき。ちなみにアリペイの決済は翌日復活していた。なんなんだよ!

 栄昌東街駅で下車。宿までの道すがら歩く街並みが映画とかゲームの世界みたいだ!!とキャッキャする。バカでかいネオンの看板たちを見てサイバーパンクって生きてるのかもしれんとはしゃぐ。童心。あちこち写真撮りまくりたかったけど何を撮っていいのか悪いのかの判断が何もつかない。万が一にもスパイになりたくなかったので基本的に街の中ではカメラは封印していた。


宿に到着。京中冀斯巴魯賓館(Zj”””subaru””” Hotel)。

 とても良い宿だった。6k程度のお値段で会場が徒歩圏(で名前がスバル)だったから選択したのだが、少し年代感はあるけれど、部屋も浴室もしっかり清潔。雰囲気も居心地も良かった。受付の方も親切に対応してくださって、とてもありがたい宿だった。感謝。また同じ会場で招集の笛が鳴ったなら同じ宿に泊まるだろう。部屋に着いた時間が想定より遅くなり、ご飯を食べる時間がなかった。結果的に機内食がでていなければぶっ倒れていたかもしれなかった。機内食のありがたみを知る旅となった。翌日の準備をしながら「Google翻訳が終わるとマジで帰ってこれない」などとツイートをしてたら現地のオタクから「上海はともかく北京に日本から来るオタク少ないから大変だと思う。困ったときはなんでも言って!」とリプをもらう。人の暖かさが本当にありがたかった。


これまで大事に新品未開封にしていたもの。

 翌朝、イベント当日。朝食はホテルのビュッフェ。ずらっと並べられたそれぞれの料理には料理名が書かれてなかったので何もわからなかったが、焼きそばっぽい麺とチャーハンっぽいご飯と円盤みたいなパンをメインに(レッツエンジョイタンスイカブツ)、他のおかずも一品ずついただく。どれも美味しかったものの、個人的には焼きそばっぽい麺が一番好みだった。なんて名前の料理だったんだろう。

ホテルの地下にある食堂。映画に出てきそうなやんわり暗めの雰囲気が良かった。
 
 食事を終わらせ、ホテルを一歩出ると、鏡音リンルカみたいな人とケモ耳の人の明らかに超気合の入ったコスプレイヤー三人衆が立っていた。かっこいい。お祭りを感じる。

 いよいよこの旅の目的地である北京亦創国際会展中心へ向かう。今回ポールプリンセス!!が呼ばれたのは定期的に北京で開催される、IDO ACG EXPOというイベント。だいたい中規模になったコミックマーケットのようなイベントで、遡った感じでは昨年から定期的に声優の方々を呼んでイベントを開催しているらしかった。百度地図(向こうの強い地図アプリ)を頼りに会場までの道のりを歩いていくと、先程のコスプレイヤー三人衆も同じ方向に進んでいた。安心。付近にはちらほらとコスプレしてる人がいる。会場に近づくにつれ、どんどんコスプレイヤーとどうみてもオタクな集団の割合が増えてきて、祭り濃度が高まってくる。オタクの流れについていけばなんとかなるのは世界共通。ありがたい。道すがら、霧矢あおいさんのコスプレをしてる方とすれ違って何度見かする。霧矢あおいさんだ……。ただの道端でコスプレのセッティングをしてる人々がちらほらいて、おおらかさを感じた。 

 会場に到着。開場30分まえほどで、既に入場待機列は多くのオタクで賑わっていた。IDO ACG EXPO の入場券には通常のチケットとは別にVIPチケットが存在する。VIPチケットを使えば入場は爆速と聴いていたのだが、こちらの入場待機列もそれなりに延びていた。
 列に並び、柵を掴むにはちょっと出遅れたかなあ…などと考えていると、周囲からチャンリオ!チャンリオ!だのオダイバゲーマーズ!だの聞こえてくる。うお…同じ声優オタクで目的まで同じやんけ…とは察したものの、そこでハロー!アイム仲間!と声を掛ける勇気はさらさらなかった。場内で迷っても彼らについていけばなんとかなりそうで、心強い。でも何かに負けたくなかったので、鞄にしまい込んでいたポルプリ50回見たよTシャツを来て圧をかけることにした。
 ポルプリ50回見たよTシャツ氏については、海外旅行の街中で日本語が大きく印字されているTシャツを着るのはリスク行動ではないか?という判断が下され、上映会とかのタイミングで着ようとベンチを暖めてもらっていた。ちょっと早めの出番である。
 そうしたのち、のんびりとしていた列移動中、先程のオタクが50回見たよTシャツを見てか、「日本人の方ですか?」と日本語で話しかけてきた。超びっくりした。今日のお目当てを聞かれたので素直にポールプリンセス!!のイベントのことを答えると(まあそりゃあ)向こうも同じだったのでそのまま一緒に行動させてもらうことに。そんなこともあるんやなあ。列に並びながら、昨日も大阪にいたんだとか(大阪!?)、李央ちゃんと直接話せる機会は少ないんだとか(そうなんや)、そんないろいろな話を聞くだけでも楽しかった。

 話を聞いていると、彼らが特に気になっていたのはサイン会で何を話せば良い?ということらしかった。彼に「別に話したいこと(彼は最近届いたらしい樋口ぬいを持っていた)があるけど、(今日はポルプリのイベントだから)そっちの話した方がいい?」などと相談された。直接話せる貴重な機会と付随するコンテンツにまつわる話をするべきかの悩みって万国共通なんや…。どう答えるべきか悩んだものの、映画のことを話すのが喜ばれる気がするけど、貴重な機会なんだし話したいこと話していいと思うとかなんとか返事をした。


入場。人スカスカで普通に柵を掴めた。

 この日は午前はポールプリンセス!!無銭上映会アンドトークショー。午後に声優の方々によるサイン会という二部構成。午前の部は入場できればなんとかなるのがわかっていたが、午後は事前に購入したチケットの引き換え手続きが必要ということで、本当に参加できるのか自信がなかった。

 上映会の開始予定時刻は10時ちょうどだったのだけれど、スタッフさんのちょっとした前説(盛り上がってね!みたいなことを言ってそう)を経て、9時58分とか59分にぬるっとはじまる。催し物がちょっと押すのはいくらでも経験があるけど、ちょっと早く始まるのははじめての経験かもしれなかった。

 親の顔より見たポールダンス公園でポールダンスを舞うAZUMI先生のシーン。いつもと違うのは、中国語の字幕が完備されていることだった。ポールダンスジャパンカップのチラシにも字幕がついてて、チラシが映るたびに画面いっぱいに字幕も広がって少し面白くなってしまった。それだけ細やかに翻訳されているのだなとも思う。自分にとってはポールプリンセス!!で学ぶ中国語講座のようで面白かった。記憶に強く残っているのは、ノア殿が「サナ」と呼びかけるとき、シーンによって「紗奈」あるいは「紫藤」と翻訳が異なっていたこと。どんな意図があったんだろう。わからない。
 学生だったころ、定期的に中国からの留学生たちとアニメに親しむ会が開かれていて何度か参加していたことを思い出した。中二病でも恋がしたい!とか見た気がする。みんな今何してるんだろう。
 この日のポールプリンセス!!は展示会の一角という超開放的な空間で上映されており、映像の撮影等は当然禁止なのだけれど、まあほかは自由だった。ツイートで実況しようと思えばいくらでもできたけど我慢。いつか機会があったらみんなで実況しようね、というのはさておき、そんな自由な空間で現地のオタクたちがまともに見てくれるのかしらと要らん心配をしていた。ドラマパート、集中して観てないと置いてきぼりだし、そもそも字幕だし。実際自分から見えていた範囲だと画面への意識はそんなに強くなかったように感じた。それでもポールダンス始まったらなんとかなるだろとは思っていたけれど。   
 実際ポールダンスジャパンカップが始まったら画面への食いつきが明らかに良くなっていたし、ノア殿あたりからはペンライトやサイリウムがそこかしこで振り回されていた。アイマスやラブライブ!のオタクが多そうに見えたので親和性があったんだと思う。とりわけ、Burning Heartのリリアがスバルの手を掴むシーンでオタクから歓声があがっていたのはしみじみと良かったし、ヒナノちゃんの演技中にユカリ様がステージサイドに登場するシーンでは悲鳴がわきおこったのは面白くなってしまった。あとはMaking Shine!でクラップが発生してたものの、見事に曲に翻弄され返り討ちになっていたのも趣深くて、ラスサビでボロボロのクラップが鳴り響いていたのもなんだか愛おしかった。やっぱり難しいよこれ!!!向こうの人はお清楚ですみたいな顔をしながらいきなり着物を燃やして刀を振り回す女の子を観てどう思ったんだろう。気になる。
 それぞれのキャラクターのショーが終わるたび、自然に拍手が起きていたのがとても良い光景で、ポールダンスは国境を超えるぜ。

 そこから30分ほど間をおき、トークショーがはじまる。ヒナノちゃん役の土屋李央さんとスバル役の日向未南さんの登場。二人ともキャラクターのビッグうちわを装備されていた。土屋さんが白とピンクを基調にしたコーデにおさげ姿というびっくりするくらい可愛らしい格好をされていておったまげたし、日向さんはこないだまで明るい髪色をされていた気がするのに黒髪になっていて眼力強めのメイクが超格好良くてこれまたおったまげていた。この日のお姿自体は公式(→https://weibo.com/2531071125/Odu2cn0EP?pagetype=profilefeed)の写真に掲載されてるのだけど、土屋さんのお靴が本当に可愛かったのに隠れて写ってないのがとにかく惜しいのでここに書き残しておきます。

 声豚メモはさておいて、トークショーは大きく3つのパートに分かれていた。トークパート、中国語クイズパート、生アフレコパートである。

 トークパートはMC兼通訳の方から質問をして、それに答えていく形式。思いのほかしっかりとポールプリンセス!!の話や演技についての話を聞くことができて嬉しい機会だった。メモしてた部分だけ書き残し。

「劇場版ポールプリンセス!!で好きなところは?」→二人への質問
 日向さん→「練習は裏切らない」という台詞が好き。声優の仕事にも通じるところがあるし、努力していきたい、といったようなことを仰っていた。先日のリンカイ!でも熊本愛さんが同じような言葉を発していましたね(?)
 土屋さん→リリスバが好き。リリアの「二人、一緒だから」と声をかけるところがすごい好き、とおっしゃっていた。このとき、「二人、一緒だから」の部分を少し声色を寄せて言葉にしてくださったのが嬉しかったポイント。

「作品でプラネタリウムは大事な存在ですが、プラネタリウムの思い出はありますか?」→土屋さんへの質問。
 土屋さん→「プラネタリウムは結構好きなのでちょくちょく行ってました。リラックスして夢うつつになって(半分くらい寝て)楽しんでいました。でも、最近はプラネタリウムの声が仕事の先輩なことが多くなって、声を聞くと仕事スイッチが入ってしまうので、前よりリラックスできなくなってしまいました」

「土屋さんと日向さんでダブルスのポールダンスショーをするならどんなのやりたい?」→二人への質問。
 →このふたりで歌うときは日向さんが声低くてカッコいい寄りに。土屋さんが声高めで可愛いよりになるので、かわいい系恋愛ソングを二人でやりたい(二人の重なる歌声が聞きたい人は劇場版公開前の二人が見れるちゃんりおスペースシップ#8を見てみてほしい。劇場版終映直後のカラオケ特番もだいぶ良いものだから見てほしい)

「北京らしいことはしましたか?」→二人への質問。
 →日向さんは豆汁デビューを果たしたそう。対して、豆汁は臭いが無理…と手を伸ばしてストップをかけるポーズをしていた土屋さんが超かわいかった。あとは二人とも北京ダックを食べたとのこと。

「ポールダンスはやったことがありますか?どうでしたか?」→二人への質問
 日向さん→「あんな高いところにいるなんて信じられない」
 土屋さん→「日向がポールに登って絶叫してたことを覚えています」

ここからはどんな文脈で出てきた発言か失念してしまったけどメモだけ残っていたもの。日向さんがスバルについて語ったり、演技について語られていたのは覚えている。
 日向さん→「スバルはかっこよくてクール。理想が高くてそれを越えるのに必死そんな彼女なので、ちょっとの傷で脆く壊れてしまう。カッコよさともろさのアンバランスさを表現したいと思ってていて、演技ではそのことを意識していた」
 土屋さん→「先輩と演技をするのは緊張します」
 日向さん→「掛け合いを録る前に鈴木杏奈さんが声をかけてくれた。(掛け合いのシーンで)本番のアフレコをするときに、鈴木さんのかけてくれた声がスッと入ってきて、自然と「なら怖くない」って言葉が出てきた。キャラクターに寄り添って、自然に出てくる言葉に任せればいいんだなと思えた」

 思っていたよりずっと丁寧に、しっかりとポールプリンセス!!の話や演技のお話を聴くことができて既に来てよかったと思えたトークショーだった。ラジオでも聴いたことのない話だった気がする。これ誰も来てなかったらどこにも残らない話になっていたかと思うと恐ろしい。

 その後、ポールプリンセス!!の劇中に出てきた言葉にまつわる中国語クイズパートが始まる。中国語が表示されて、それに当てはまる意味を答える形式。
 クイズは三門あり、問と答えはそれぞれ天文馆/プラネタリウム→双人舞/ダブルス→钢管银河/ポールギャラクシー、お二人も結構スルスルと答えられていた。漢字って偉大。個人的に双人舞がかっこよくて好み。7人で踊ったらどう表記するんだろう。

 クイズパートののち、生アフレココーナー。事前にそんなコーナーあるとは知らなかった(トークショーあるとしか知らされてない)ので、跳ね上がるほど嬉しかった。

 生アフレココーナーでは劇場版の中からピックアップされた三つのシーンを演じられた。
 1つ目はスバルとヒナノちゃんがブランコしてるシーン。スバルの「リリアが悪いんじゃない」からはじまり、ヒナノちゃんが「リリアとは幼稚園の頃からずっと一緒だけど」と返し、スバルが「リリアに話したら……」と言葉を濁すところ。ここだけ土屋さんと日向さんによる掛け合い。リリアに話したら……で演技が終わるのは(次はリリアが出てくるので)そりゃ当然なんだけどちょっと面白いポイントだった。いっそ「話したら何!?」と叫んで野生のリリアになればよかったかもしれない(よくない)。ここのシーンの本当に大好きで、ヒナノちゃんのぬいぐるみのお洋服もこのシーンから選んだくらいなので生の掛け合いを聴けて嬉しかった。
 2つ目のシーンはそのまま続いてブランコのくだり。リリアの姿を見て立ち直ったスバルがリリアに声をかける場面。日向さんが「これは私が超えなきゃいけない壁」のところを生アフレコされた。いいシーンを選びはるで。
 3つ目のシーンはヒナノちゃんのポールダンスショー中がピックアップされた。「逃げない!」からはじまる「ポールの上にいたい!」までのところ。いいシーンを選びはる……。

 生アフレココーナーでは、(当然だけど)劇場版のなかで聴くそれとは少し違う息遣いや声色、テンポの違いから、生の演技を実感できてありがたかった。ポールの上にいたい!のヒナノちゃん本当に楽しそうで好き。それまで楽しくトークされていた声優さんが、いざ演技するときは一瞬でスッとお仕事モードに切り替わるところがとてもカッコよくて、ありがたいものを見ている気持ちになる。
 土屋さんが生アフレコをされたあと、日向さんが「土屋さんの声が好き!」と発言したら現地のオタク達が\おれもすきー/って返事がおきる。日向さんの言葉を司会の方が通訳したあと、もう一度\おれもすきー/って返事がおきる。そんな感じでちょっとのあいだ「土屋さんの声が好き!」「「おれもすき!」」なんてコーレスが起きてたのが面白かった。僕も好きなので叫ぶべきだったんだとおもう。

 最後に、皆で集合写真を撮ってトークショー終了。もうすっかり満足していたけど、まだサイン会があるんですか!?

 その後。集団で迷ったりしながらも窓口を見つけ、サイン会のチケットを交換する。bilibiliアプリから購入した電子チケットのQRコードを受付のスタッフさんに読み取ってもらう。するとその場で照合が行われて、特典券とサイン会用の色紙が渡されるのだった。特典券は日本の小さな紙ペラな特典券とは違って、プラスチック製なカードが用意されていた。ガチャンと穴を開けて、サイン会への参加を確認する方式で、カード本体はお土産として持って帰ることができる。色紙の方は裏面にヒナノちゃんとスバルが印刷されている特別製。重厚感があって嬉しいもの。
 ここらへんで実感したことだが、会場で迷ったり、わからないことがあるときはスタッフさんに質問するのが一番早い。公式のインターネットに情報があがったりはしないので。
 サイン会がはじまる時刻までそこそこ余裕があったので、一緒に行動していた彼たちは一生サイン会の作戦会議をしていた。この機会に、何を、どんな言葉で伝えようか考えてスマホに打ち込んで、言葉に出して練習している真剣な様子がとても良くて、リアム・ギャラガーの接近イベントがあったとして自分はここまでできるだろうかとか考えてしまった。日本語でおかしいところはない?と頼られたので自分で添削できるところは添削した。ひたすら介護されてたのでこちらが力になれることもあったのがありがたい。
 整理番号の呼び出しがはじまる。呼び出しがはじまって気付いたことなのだが、現地の言葉がわからないので、今何番が呼び出されてるのかわからない。番号順にとりあえず全員並ばせるタイプではなく、時間が近づいてきたらその都度番号を呼び出して入場させるホスピタリティ溢れるシステムだったのも向かい風であった。最後の最後にして難関が立ちはだかったのだけれど、同行していた方々に介護されてなんとか入場できた。ただただ感謝しかない。
 入場後、サイン会の列でCUEからの土屋さんファンという方に話しかけられ、しばらくお喋り。日本人いないねという話をしたりする(その人はアメリカの人です)。確かに、日本から来たオタクは自分以外にも見かけたけど日本人のオタクは本当に見かけなかった。なんでだろう。彼から、アメリカから日本にくるのも北京にいくのもそう変わらないという話を聴き、道民からすると東京いくのも福岡いくのも変わらないじゃんの世界スケールだったので、勝手に敗北感を味わう。
 土屋さんのサイン会の機会は珍しいらしい。とりわけ名前を書いてくれるのは何年か前に遡るのだとか。土屋さんのイベントに顔を出すようになったのは三ヶ月ほど前からなのであれこれ興味深い話を聴けてありがたかった。そのなかでも一番大事な話は今日サイン会ループできるらしいよということだった。
 え!? 何周してもいいんですか!?

 ループの有無はともかく、ひとまずは目の前のサイン会。今回のサイン会は宛名も書いてもらえる。スマホのメモ等に名前を入力し、それをスタッフに渡すシステム。紙に書いて提出よりSDGsなオタク活動かも。入場後は滞りなく列が進み、いよいよサイン会。外から見えないよう目張りのしてあるテントの中に入って、お一人お一人にサインをしてもらえる方式。お手紙もここでスタッフに渡すことができる。
 中に入ると目の前に前述の超可愛い土屋さんが鎮座されていた。web版上映会のムビチケお渡し会で装備されてた猫耳もすごい似合ってたけど、この日はそれ以上に”かわいい”だった。
 第一声、向こうからニーハオって声をかけられる(あっ日本人ですと返した)。連れて行ったヒナノちゃんぬいを見て、天才!!って食いついてくださり、大いに嬉しかった。ありがたい。日向さんはちゃんのぬいのお洋服は作中の私服を再現してることにも触れてくださって、ただただうれしい。最初は監督がぬいぐるみ作ってるんだから負けられない(?)なんて気持ちで作り始めたけれど、こんな機会につながるのだなあと感慨深い。あとは50回見たよTシャツにまつわる話をしたりした。毎朝見てた〜と伝えると本当!?と返されたりとか。本当は毎朝と夜とたまに昼。あとは、今日のお姿かわいい!!!!とかかっこいい!!!とか伝えたりとかした。この日、土屋さんは日向さんにもかわいい!!と言われたのだとか。わかる〜。  
 北京まできてそんなかわいいとかかっこいいとか伝える必要ある?と自分でも思うし、質問してみたいこととかもたくさんあったのだけど、質疑応答みたいなことをするのもなんだかなだし、その日めちゃんこかわいかったりかっこよかったりしたことに対して直接言葉で伝えられるのって幸せだとおもうし。そして案の定あそこであの質問しておけば良かった〜!と今になって後悔している。

 そのあと、スタッフの方に多大なお手数をおかけしたり同行したオタクの力を借りたりして、二周目のサイン会に滑り込む。どうやらサイン会もほぼほぼ終わりの時間になり、もはやレーンに誰も並んでないし、入り口も半分閉まってたので国内の特典会だったら完全に終わってるパターン。あっもう終わっちゃったかな…ってまごついてたら日本語が流暢な現地のスタッフがどうぞー!と通してくださり、ドタバタとサイン会に流れ込んだ。感謝。ごめんなさい。二度目も引き続き、ヒナノちゃんが好き!!!とかそんなことを伝えて、わちゃわちゃとした会話をした。土屋さんはヒナノちゃんのショーのフルバージョンをまだ観たことがないそうです。世界の損失だ。(そんな貴方にも劇場版ポールプリンセス!!Blu-ray Discというものがある)

 結果的に人生で初めての鍵閉めの形になり、なるほどこれは鍵閉めのために頑張る人もいるなと思いました(感想)。ありがとうございました。

 会場をあとにする際、同行していた現地のオタクの方々と「また東京で!」と別れた。すごい幸せな一日で、関わってくださった全ての方々に感謝いっぱいだった。結果的にポルプリ50回見たよTシャツに大いに救われた。ポルプリ50回見ておいて良かった〜〜。貴重な体験をありがとう、ポールプリンセス!!

現地のオタクとぬいとちゃんの記念写真

 そのあと一泊したのち、頑張って帰る。SIM失くしかけたり、搭乗券の半券失くしたり最後まで紙一重でしたが無事帰ってこれました。最終的に全ての答えをヤー!でなんとかしてたんですがヤー!って何ですか?

 北京に行く前にあれこれ調べていたけれど上海のイベントに参加したオタクのブログにかかれていた「声優が行くところはだいたいオタクも行ける」という言葉に勇気づけられたりした。今となってはぼくもそうおもうのでこれから北京に招集される人はがんばってほしい。
 Google翻訳がなかったら生きて帰ってこれなかったのは大マジで、とりわけ画像翻訳機能が最強。読みも何もわからない現地の言葉を自動で読み取って日本語に変換してくれる。イベントのチケット申し込みはこの機能がないと戦うことすらままならなかった。テキスト対訳機能や音声入力対訳機能も非常に心強い存在で、帰りの飛行機に乗るまで一貫して無双し続けていた。言葉が通じない状況でパッションでなんとかできない人種でもGoogle翻訳があればなんとかなる。
 アリペイは言わずもがな必須。向こうの地図アプリであるところの百度地図も非常に有用なので、とにかくスマホさえ生きていればなんとかなる。

参考にしたサイト様↓
https://aruru753.hatenablog.com/entry/2024/03/11/210605
https://ameblo.jp/akb48teamsh/entry-12834383274.html